映画  AYA DE YOPOUGON 『恋するヨプゴン・ガール』
22/09/201615:48 Yusuke Kenmotsu


コートジボワール版ちびまる子ちゃん
 
2011年のマルグリット・アブエとクレマン・ウブルリという2人の監督によるアニメーション映画。元々は同名のバンドテシネ作品が原作で、それを手掛けたのが本作の監督2人である。役割担当は明確で、原作ではコートジボワール出身のマルグリット・アブエがストーリーを作り、クレマン・ウブルリが作画を担当していた。映画になってもそれはほとんど同じで、シナリオとイラストを分業しながら監督したようだ。
 
本作はアフリカのコートジボワールという国が舞台のアニメーションなので、実写のフランス映画ファンには縁のなさそうな作品だけれど、声優に目を向けるとフランス映画でよく見る役者たちが多数参加しているのに気づくだろう。それもコートジボワール育ちのタチアナ・ロホだけでなく、セネガル出身のアリサ・マイガ、ブルキナファソ出身のジャッキー・イド、カメルーン出身のエミル・アボソロ=ムボ、コンゴ出身のパスカル・ンゾンジ等アフリカにルーツを持つ様々な国の役者たちが集結しているので、実はオールスターキャストの作品なのである。
 


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タイトルにもなっているヨプゴンとは、コートジボワール最大の都市アビジャンの工業地域の事で、庶民が暮らす地区の事だ。ここで暮らす19歳のアヤは医者になりたくて進学を希望しているが、父親は働いてお嫁さんになることを望んでいる。勉強ばかりしているアヤと違い、アヤの親友ビントゥとアジュアは夜遊び好きで、お酒を飲んだり踊ったりして男たちと毎日楽しんでいる。そんな中アジュアの妊娠問題が発覚し騒動となる。アジュアは相手をビール会社社長の子息ムッサと言うが、子供の本当の父親はいったい誰なのかというストーリー自体に真新しさはない。しかしアフリカを舞台とした作品で、米国産のラブコメ映画のように性に奔放な女性たちを見るのは珍しい。実写では生々しくなりすぎるのでアニメーションだからできることと言えるだろう。

生まれたばかりの赤ん坊を見た社長夫人が、息子に似ていないので他人だと断言する場面も、実写であれば民族的特徴などで相手を見下すような振る舞いになりかねないところだが、実の父の顔をそのままはめ込んだような顔の赤ん坊なのでギャグのような機能を果たしている。

本作はアニメーション作品ながら実写の映像から始まる。目の粗い実写の映像でカメラが引いていくとそれはテレビCMでアニメの人物たちが見ているテレビの映像であることが分かる仕掛けだ。

日本のアニメと絵の雰囲気に多少違いはあるが、色彩豊かで面白い。雷が鳴るとその後のストーリーは波乱が起こるというような、ハリウッド的映画文法をきちんと踏襲していて、映画として見やすい作りとなっている。
 


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この作品の時代設定は1970年代ということである。原作者のマルグリット・アブエが幼少を過ごした時期ということで、さくらももこさんの「ちびまる子ちゃん」のような作品なのだろう。しかし原作の第一巻が発行されたのが2005年ということで、単なるノスタルジーとは一線を画す作品と見ることができる。2002年に政府軍と反乱軍の間で起きた内戦の最中であったのだ。サッカーW杯2006年ドイツ大会の予選で、2005年10月にコートジボワール代表はスーダンと対戦して本大会出場を決める。その試合後、ヨプゴン出身のディディエ・ドログバ選手はカメラをロッカールームに招き入れ選手全員で跪きながら、武器を置き選挙を実施するよう訴えた。そして1週間と経たないうちに内戦は終結したという、サッカーファンにはあまりにも有名な逸話と同時期なのだ。

そういう意味では『恋するヨプゴン・ガール』の原作も高度経済成長を果たして元気だった1970年代の「イボワールの奇跡」の時代を描くことで、北部も南部もなく国民みんなで同じ方向を向いて平和を目指そうと訴えているようである。

2010年には大統領選挙の結果を巡り、両候補が勝利を主張し大統領が2人になってしまうという異常事態の第2次コートジボワール内戦が起こる。『恋するヨプゴン・ガール』の映画化が2011年というのも偶然とは言い切れないだろう。
 
 

1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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