映画  JE VAIS BIEN, NE T’EN FAIS PAS『マイ・ファミリー/遠い絆』
03/10/201617:47 Yusuke Kenmotsu

兄からの手紙、さまようメラニー・ロラン
 
 
2006年のフィリップ・リオレ監督作品。『パリ空港の人々(1993)』や『君を想って海をゆく(2009)』でお馴染みの名監督だけれど、本作は日本では劇場未公開。オリヴィエ・アダムの原作小説に惚れ込んだリオレ監督が、原作者と共同で映画の脚本を作り上げている。

主演はメラニー・ロラン。16歳でジェラール・ドパルデューの監督作『Un pont entre deux rives(1999)』で映画デビューを果たしたメラニー・ロランはその後、様々な作品に出演するが、セザール賞で有望若手女優賞を獲得した本作『マイ・ファミリー/遠い絆』が出世作となったのは間違いないだろう。物語の中で拒食症となる役柄なので、実際に6キロほど落として撮影に挑む役者魂やその美貌は当時から話題になっていた。フランスでの公開当時、彼女のアップの本作のポスターによって観客動員数が伸びただけでなく、ポスター泥棒まで現れたという逸話があるほどだ。その後もキャリアを確実にステップアップさせ、クエンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ(2009)』では、「復讐に燃える女」というタランティーノ的ヒロインを見事に演じきり国際派女優の仲間入りを果たした。



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他の出演者では父親役のカド・メラッドが、一見頑固親父風でありながら秘密や葛藤を抱えた繊細な演技でセザール賞の助演男優賞を獲得している。

主人公リリを支える友人役のアリサ・マイガはアニメーション映画『恋するヨプゴン・ガール(2011)』では悩める主人公アヤの声を担当していたが、本作では恋に友情にと積極的な役柄を好演している。
 
19歳のリリー(メラニー・ロラン)がバルセロナから1か月ぶりに帰ってくるが、双子の兄ロイックが父と喧嘩をして家を飛び出したと知る。心配して何度も電話をするが繋がらず、留守電に伝言を入れても、連絡はない。兄の身を案ずるあまり食べ物を受け付けなくなったリリー、入院が必要なほど衰弱してしまう。そんな彼女の元にロイックからの手紙が届き、次第に元気を取り戻す。ロイックからの手紙はフランス各地からの消印で絵葉書が送られてくる。そこには毎度リリーや母を気遣うメッセージや父への罵詈雑言が溢れているのだけれど、ロイックは一向に姿を見せず、電話すらない。
 


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この映画は家族の絆を描きながら、ロイックはいつ現れるのか、本当に生きているのかといったある種のサスペンス要素を孕んでおり、最後まで緊張感を持って観ることができるだろう。

『灯台守の恋(2004)』や『君を想って海をゆく』などリオレ作品にはしばしば海が登場するが、その場合ただの風景という以上に意味を持つことが多い。本作の海は癒しや安らぎをもたらす場面もあれば、不安や焦燥、ある人物にとっては贖罪をも表すような様々な表情を見せている。

本作は比較的欧米で評価が高く、日本ではほぼ無視。観た人でも首を捻る人が多いようだ。そこにある家族観や宗教観、死生観や双子に対する神秘性などちょっとした違いを比較するのも興味深い。
なにはともあれ記念すべき映画初主演の、10年程前のメラニー・ロランは絶対的に美しく、必見である。
 
 
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1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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