映画  CÉSAR ET ROSALIE 『夕なぎ』
18/11/201614:43 Yusuke Kenmotsu


三角関係、時々友情
 
1972年のクロード・ソーテ監督作品。ソーテ監督といえば1960年の『墓場なき野郎ども』というリノ・ヴァンチュラ主演で作られた、妻を失くした子連れギャングの映画でフィルムノワールファンには忘れがたい監督だ。

一般的にはソーテ監督は『すぎ去りし日の…(1970)』『はめる/狙われた獲物(1971)』『ありふれた愛のストーリー(1978)』でロミー・シュナイダーと、『友情(1974)』『ギャルソン!』でイヴ・モンタンとコンビを組み、大人の恋愛や男同士の友情を描いた名匠というイメージだろう。ロミー・シュナイダーとイヴ・モンタンを主演にし、男女の三角関係を堂々と描いた本作『夕なぎ』は監督だけでなく、主演2人ともの代表作と言えるほどの最良の演技を引き出している。



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女1人、男2人という本作の三角関係の構図におけるもう1人の男はサミー・フレイ。ジャン=リュック・ゴダール監督の名作『はなればなれに(1964)』でも見事に女1人、男2人映画の一角を担った彼は、本作ではイヴ・モンタンの恋敵としてクールな魅力を放っている。

本作ではいまや活躍の場はフランスだけでなく、国際的な大女優となったイザベル・ユペールのデビュー間もない姿をチラッと見ることができる。そしてナレーションはソーテ監督作品で主役を務めたこともあるミシェル・ピコリ。声だけの出演なのでクレジットを見て初めて気づく人のほうが多いはずだが、贅沢な使い方が面白い。
 
シングルマザーのロザリー(ロミー・シュナイダー)は解体業を営む肉体派の恋人セザール(イヴ・モンタン)と同棲していた。順調だった二人の前にロザリーの昔の恋人であるダヴィッド(サミー・フレイ)が現れて、ロザリーは前の男と今の男の間で揺れるという紋切り型の三角関係映画と言えるだろう。しかしロザリーとダヴィッドの再開の場が、ロザリーの母(エヴァ・マリア・メインケ)の3度目の結婚式であるといった設定のユニークさや、登場人物それぞれの魅力が本作最大の特徴だ。ロザリーに脈々と流れる恋愛体質も母から受け継いだものだろう。
 

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陽気でエネルギッシュで少しばかり短気なセザールと、芸術家肌でクールでありながら実は熱い心を持つダヴィッドという、全く違う個性の2人の男たちの組み合わせも魅力的だ。中年のセザールがダヴィッドの存在に気づいて、子供のように動揺し嫉妬する演技はイヴ・モンタンにしかできないような貫禄と愛嬌である。恋敵の元へ行き掴みかかったり、ロザリーが自分との子を妊娠しているとすぐばれるような嘘をついたりと、一歩間違えばただの危険人物になりかねないところを、モンタンの柔和な表情と声色、人柄で憎めない好人物へと昇華させている。



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この映画では愛に奔放な女ロザリーが、全くタイプの違う2人の男の間を行ったり来たりするのだけれど、意外な方向へと話は進んでいく。同じ女性を愛したセザールとダヴィッドは水と油のような関係で、全く理解しあえず対立していたがいつの間にか奇妙な友情が芽生え、親友と言ってもいいような親密な間柄となる。思い悩み2人の前から姿を消していたロザリーの乗る車が、楽しそうに談笑しているセザールとダヴィッドのいる家の前に停まる。この先どうなるかという余韻を残し映画は終わる。女1人男2人の三角関係映画では誰かが死んでしまうケースが多いが、本作は誰も死ぬことがなく観終わった後気持ちよくなるような作品だ。フランス映画らしい大人の恋愛映画であった。
 

再放送:11月19日(土)23:05、21日(月)21:05



1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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