映画  LES SŒURS BRONTË 『ブロンテ姉妹』
11/11/201700:02 Yusuke Kenmotsu
3姉妹とブランウェル
 
1979年のアンドレ・テシネ監督作品。テシネ監督は1960年代には、カイエ・デュ・シネマで批評家を経験しており、その後映画監督として1969年に長編デビューを果たす。彼は現在でも新作を撮り続けており、短編の時期を入れるとキャリアは半世紀を超えている。

彼は女優を美しく、印象的なヒロインとして描くことに定評があり、イザベル・ユペール、カトリーヌ・ドヌーヴ、サンドリーヌ・ボネール、エマニュエル・ベアール等、フランスを代表するような女優たちと仕事をしているが、中でも『ランデヴー(1985)』のジュリエット・ビノシュの役はただ美しいだけではない新しい時代のヒロイン像を生み出したように見える。実際その後の『汚れた血(1986)』や『ポンヌフの恋人(1991)』といったレオス・カラックス作品でのジュリエット・ビノシュのヒロイン像は『ランデヴー』を継承していると思われる。

またテシネ監督は『バロッコ(1976)』では、主演のイザベル・アジャーニもさることながら助演で心優しき娼婦を演じたマリー=フランス・ピジェの最良の演技を引き出し、彼女はセザール賞の女優賞を獲得することになる。

 
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多くの女優達の個性や最良の演技を引き出すテシネ監督が『バロッコ』の次に取り組んだのが『ブロンテ姉妹』だ。『バロッコ』に続いてイザベル・アジャーニ、マリー=フランス・ピジェが出演しており、そこにイザベル・ユペールを加えた3人がブロンテ3姉妹を演じている。シャーロット、エミリー、アンの3人はイギリスのヴィクトリア朝を代表する小説家で、映画ファンなら何度も映画化された『ジェーン・エア(シャーロット)』や『嵐が丘(エミリー)』の原作者としてもお馴染みだろう。この映画はヨークシャーを主な舞台としたイギリス文学史上重要な3姉妹の物語を、フランス人監督がフランス人のキャストを使ってフランス語でフランス映画として作っている。これが昔のアメリカの戦争映画でのアメリカ兵もナチスもみんな英語を話すという陽気さとはまた違った、独特の肌触りとなっている。また、多くのプロの役者たちに交じって、『明るい部屋』などの高名な哲学者ロラン・バルトが作家サッカレーに扮して登場するのも興味深い。映画や演劇に造詣の深いバルトはテシネ監督がお気に入りであったようで、役者として映画に出演したのは生涯この一度きりであった。

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この作品では3人の女優はほとんど笑わない。そして小説の中の登場人物のような激しい恋愛をするわけでもない。しかしシャーロットは花がきれいな野バラを愛し、エミリーはその脇の柊を愛しており、2人が何気なく交わす禅問答のようなやり取りで、2人の性格やそれに反映された彼女たちの作品の世界観を覗き見ることができるだろう。

この映画でのブロンテ3姉妹の静謐さとは逆に、唯一の男兄弟であるブランウェル(パスカル・グレゴリー)は悲劇的な恋をして破滅的な死を迎える。映画の主人公のような波乱万丈の男ブランウェルを、彼が描いた絵画も含めて追いながら観ると、この映画もっと面白く観られるだろう。
1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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