映画  1 chance sur 2 『ハーフ・ア・チャンス』
19/06/201815:18 Yusuke Kenmotsu
見せ場半分半分
 
1998年のパトリス・ルコント監督作品。日本ではミニシアターブーム全盛のころに『仕立て屋の恋(1989)』や『髪結いの亭主(1990)』がヒットしたので強烈に印象に残っているファンも多いだろう。近年もアニメーション作品『スーサイド・ショップ(2012)』やツヴァイク原作の『暮れ逢い(2013)』など話題作を撮って活躍している監督だ。

近年の彼のフィルモグラフィから娯楽映画とは縁がないと思われがちだが、実はそのようなこともなく、初期は『スペシャリスト(1984)』のようなアクション大作も撮っている。この『スペシャリスト』という作品は、2人の囚人が脱獄し手錠につながれたままカジノの金庫破りを企てるアクション映画で、男同士の友情をユーモアたっぷりに描いていた。おそらく『スペシャリスト』をヒットさせたことが、本作『ハーフ・ア・チャンス』の監督を任されるきっかけになったのだろう。

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本作で最も注目すべきはなんといってもアラン・ドロンとジャン=ポール・ベルモンドの28年ぶりの共演だろう。最初の共演はお互いデビュー間もない時期に端役としてマルク・アレグレ監督『黙って抱いて(1958)』という作品で果たしている。60年代、70年代のフランス映画界を支えることになる大スター2人が本格的に主演で共演したのは『ボルサリーノ(1970)』である。映画の中ではお互いのキャラクターを活かしたギャング像で素晴らしいコンビネーションを見せていたが、ポスターの名前の順番でトラブルとなり、裁判にまで発展した。このことが、元々2人の間にあった不仲説を決定的なものとし、誰も共演のオファーをしなくなったのだ。28年という長い年月タブーとされてきたアラン・ドロンとジャン=ポール・ベルモンドが再び共演を果たした『ハーフ・ア・チャンス』はそれだけでもフランス映画史に残る作品と言っていいだろう。
 
若い女性アリス(ヴァネッサ・パラディ)は高級車ばかり狙う窃盗犯で、刑務所から出てきたところだ。服役中に亡くなった母ジュリエットが残したボイスメッセージを聞くと、アリスには2人の父親候補がいるという。1人は高級中古車販売をしているレオ(ジャン=ポール・ベルモンド)で、もう1人はレストランオーナーでありながら大手銀行を狙う泥棒ジュリアン(アラン・ドロン)だ。アリスはレオとジュリアンを訪ねるが、2人とも娘なんて心当りないという顔をしている。しかし2人とも共通しているのは、昔の母ジュリエットを本気で愛していたということだ。不思議なことに、レオもジュリアンも突然現れた娘の可能性のあるアリスのことが愛おしくなり、自分の娘であってほしいとさえ思うようになるのである。

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そんなときにアリスは夜中一人でナイトクラブへ遊びに出かけるが、男たちに囲まれ危険な目にあいそうになる。なんとか逃げ出し、近くのガソリンスタンドに停まっていた車を盗んでレオたちがいるところまで帰るのだが、その車にはマフィアたちのドラッグ売買による大金が隠されていた。これによってマフィアたちに追われることになってしまう。
 
ストーリー自体は何の変哲もないのだけれど、アクションシーンやアリスとの時間など、アラン・ドロンとベルモンドの見せ場がちょうど半分半分になるように計算された脚本や演出が心憎い。彼らの過去の作品を観ていたらより一層楽しめるだろう。『勝手にしやがれ(1959)』などで自動車の運転のイメージが強いベルモンドは本作でもスポーツカーを運転し、『冒険者たち(1967)』で飛行機を操るアラン・ドロンは本作でヘリコプターや飛行機を操縦する。『冒険者たち』で印象的な、凱旋門の下を飛行機でくぐろうとするシーンへのオマージュも注目の場面だ。ヘリコプターから垂らされた縄ばしごに運転中の車から飛び移るという、ベルモンド映画でよく見る光景も、本作では「またやるのかよ」とぼやきながらというのが長年のファンの笑いを誘うだろう。
アリスは最後に検査の結果を聞いて、どちらの娘か分かったはずだが、こちらには明かされない。アリスがどちらの娘か本気で考えながら観るのも面白いだろう。
1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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