映画  ALEXANDRE LE BIENHEUREUX 『ぐうたらバンザイ!』
23/04/201916:08 Yusuke Kenmotsu
真剣にぐうたらする男
 
1968年のイヴ・ロベール監督作品。彼は役者としてキャリアをスタートさせ、ジェラール・フィリップ主演の『夜の騎士道(1955)』の演技で有名になる。監督としては1951年に最初の短編を撮ったのを皮切りに演出の方でも活躍するようになる。やんちゃな子供たちのけんかを描いた『わんぱく戦争(1961)』でジャン・ヴィゴ賞を受賞すると、その勢いで主演の男の子を再度起用した『わんぱく旋風(1962)』も大ヒットさせ、ヌーヴェルヴァーグの嵐が吹き荒れるフランス映画界にあって娯楽派の地位を不動のものにした。本作『ぐうたらバンザイ!』では妻である人気女優ダニエル・ドロルムと共にプロデューサーも兼ねている。
 
アレクサンドル(フィリップ・ノワレ)はフランスの片隅で農夫としてつつましくも平穏に暮らしている。しかし働き者の彼の妻(フランソワーズ・ブリオン)はアレクサンドルのサボり癖を快く思っていない。アレクサンドルが寝坊でもしようものなら彼女は、指をパチンと鳴らし「アレクサンドル!」と一喝する。しかし天性のぐうたら男アレクサンドルは仕事中梯子に上りながらでもトラクターの運転中でもいつでもどこでも惰眠を貪ろうとする。その度にパチンと鳴り「アレクサンドル!」という声が響き渡るのだ。大柄でぐうたらの夫が妻の一喝で毎回ロボットのようにきびきびと働き始めるのが笑いを誘う。

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しかしそんな彼女はあっけなく交通事故で死んでしまう。アレクサンドルは最愛の妻に先立たれ悲しみに打ちひしがれるかと思いきや、妻の葬儀が終わるやいなや、これからがぐうたら人生の本番だと言わんばかりにベッドに潜り込む。3日たっても起き上がらず周りの住人が心配して駆けつけるほどだ。天井から吊るされた紐を引っ張れば、ベッドに入ったまま一日のすべての生活が行えるように仕掛けを施すなどして真剣にぐうたらするアレクサンドルだが、食料は底を尽きてくる。そこで彼は飼い犬に買い物かごとメモとお金を持たせ、近所の食料品店に買い物に行かせるのだ。この食料品店で働き始めた若い女性アガト(マルレーヌ・ジョベール)とアレクサンドルが接近していく展開も面白い。

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アレクサンドルが彼女との出会いをきっかけに外に出るようになると、周りの村人たちも彼が働き始めると期待する。そんな期待をよそに彼は犬やアガトと釣りや散歩を楽しみノンシャランな人生を謳歌している。
 
フランス映画史に燦然と輝くノンシャラン映画の先達、ジャン・ルノワール監督『素晴らしき放浪者(1932)』のミシェル・シモンのごとく、本作のアレクサンドルも結婚式の最中に飛び出し、畑の案山子と服を交換し自由に向かって歩き出す。ルネ・クレール監督『自由を我等に(1931)』やジャック・タチ監督『ぼくの伯父さん(1958)』など規則で自由を失った現代人に向けた人生賛歌映画の系譜を受け継ぐ作品である。


『ぐうたらバンザイ!』の放送時間は
こちら
1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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