映画  MENINA 『メニーナ』
23/08/201916:17 Yusuke Kenmotsu
2つの文化で揺れる少女
 

2017年のクリスティナ・ピエイロ監督作品。彼女は女優としてキャリアをスタートさせると2012年には短編で監督デビューし、本作『メニーナ』が長編初監督作品である。

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映画監督の長編第1作にはフランソワ・トリュフォー監督『大人は判ってくれない(1959)』のように自伝的な要素の強い作品が数多くあるが、本作もそういった傾向が見られる。クリスティナ・ピエイロ監督は両親がポルトガルからやってきた移民で、彼女自身はフランスで生まれ育っており、『メニーナ』の家庭とそっくりである。メニーナという言葉がポルトガル語で「少女」を意味するので彼女の少女時代の投影と考えていいだろう。
 
本作の舞台は1979年に設定されている。冒頭のシーンはポルトガル移民の仲間たちとのパーティーのようなシーンで始まるが、これはポルトガルが長きにわたる独裁体制を終わらせたカーネーション革命の記念日である4月25日を祝うものである。
 
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本作の主人公ルイザ(ナオミ・ビトン)やその両親もそこにいるのだが、ルイザの父ジョアン(ヌーノ・ロペス)は酒を飲みすぎたのか友人と口論になり衝突してしまう。ジョアンの深酒や暴力衝動は後に家庭にも持ち込まれることになるので、この冒頭の場面は重要なシーンである。
 
ポルトガル人である父ジョアンや母レオノール(ベアトリス・バタルダ)と違い、10歳の娘ルイザはフランスで生まれフランスの学校に通っているので両親よりも正確なフランス語を話す。母がルイザに丁寧語で話しかけるたびに文法の間違いを指摘する。しっかり者のルイザだが、逆に彼女の両親の故郷であるポルトガルについては無知で、ポルトガルの独裁者サラザールと聖ラザールを混同してしまうという子供っぽさも垣間見える。
 
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ジョアンは肺がんに侵されており、どんどんやつれていく。彼が酒を飲みすぎてしまうのは病魔からの逃避もあったのだろうが、それは事態をより悪化させる。酒に酔い、妻に対し暴力的になってパスポートを探す場面の悲壮感は凄まじい。どうにかしてもう一度故郷を見たいという想いから狂ったように抽斗をかき回しパスポートを探すのだが、誰もがもう帰ることはできないと分かっている。
 
この映画は父の死で幕を閉じる。そしてその日付が7月14日というのも大きな意味を持つだろう。ポルトガルで重要な日付である4月25日で始まった映画がフランスで重要な日付である7月14日で終わる。本作は監督自身が2つの文化の間で揺れ動いていた「少女」時代についての自伝的な物語であるとともに、これからの生き方の決意表明にもなっている作品である。
1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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