映画  NOS ENFANTS CHÉRIS 『最愛の子供たち』
06/09/201916:45 Yusuke Kenmotsu
元カノとのヴァカンス
 
2003年のブノワ・コーエン監督作品。彼は建築を学んだあと、映画監督を目指すためにアメリカに渡り大学で映画の勉強をする。そしてフランスに戻り1991年に短編作品『Goal!』でキャリアをスタートさせる。『カメレオン(1996)』で長編第1作を撮り、本作『最愛の子供たち』は彼にとって3作目である。これ以降も映画やテレビのシリーズものなど幅広く手掛けているのだが、2014年から再びアメリカに渡りブルックリンで暮らしている。彼は脚本に活かすつもりで6カ月間ニューヨークの路上で実際にタクシーを運転した。その経験が本になるのだが、その名も『Yellow Cab Flammarion』。映画化実現に向けて動いているようだ。
 
30歳になるマルタン(マテュー・ドゥミ)は4カ月になる娘スリーズを連れてスーパーマーケットで買い物していると、以前交際していたコンスタンス(ロマーヌ・ボーランジュ)と偶然出会う。コンスタンスも結婚していて2人の子供を連れていた。2人はハグしようと接近するも、お互いがお腹で抱えていた赤ちゃん同士が先にぶつかってしまいうまくいかない。どこかちぐはぐした再会である。ヴァカンス前ということもあり話はヴァカンスの行き先についてになる。そしてどういうわけかマルタンの家族のところにコンスタンスの家族が合流することになるのだが、それぞれに妻や夫がいるので波風が立たないわけはない。

Nos_enfants_cheris_TV5MONDEApac_1.jpg

Nos_enfants_cheris_TV5MONDEApac_2.jpg

実際マルタンの妻アリアンヌ(ローランス・コート)は夫の昔の彼女が来るということで明らかに神経質になっているし、コンスタンスの夫アルノー(マティアス・ムレクス)に至っては2人が交際していたことすら知らされていない。またマルタンの友人のクレール(エレオノーレ・ブリア)は現在の交際相手ジャン=マルク(ファビオ・ゼノニ)には子持ちであることを隠し、男友達シモン(ジュリアン・ボワスリエ)の子どもということにしてみんなでマルタンのところにやって来る。
それぞれが抱えた秘密や嘘が時限爆弾のようにしばらく時を置いて最後に連続で爆発するところが本作のクライマックスと言えるだろう。
 
これだけの人数が言いたい放題やりたい放題でもマルタンはみんなの料理やコーヒーを用意して気を遣っている。そんな彼は普段はチェリストということで、やり場のない怒りやストレスは納屋でひっそりとチェロを奏でて自分を落ち着かせようとするのだが、3度あるその場面は毎回誰かが入ってきて強制終了となる。同じようなシーンだがマルタンの表情や身振りにだんだん怒りが加わっていて笑いを誘う。
 
Nos_enfants_cheris_TV5MONDEApac_3.jpg

題名からかけ離れたような、ラブコメのみに許された身勝手な終幕だが、美しい海岸沿いで身を寄せて歩く2人を見ているとなんとなく納得してしまうのではないだろうか。

本作でクレールの息子ヨヨとして登場する赤ちゃんは監督の息子アウレリオ・コーエンということで、自身の「最愛の子ども」を登場させていることになる。このアウレリオ・コーエンの成長は以降のブノワ・コーエン作品で確認することができ、2013年の『Tu seras un homme』では主役まで任されている。
1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

おすすめ

 

おすすめ

 

おすすめ