映画  GARDE À VUE 『検察官』
23/10/201915:28 Yusuke Kenmotsu
取り調べの緊張感
 
1981年のクロード・ミレール監督作品。彼は60年代後半にジャン=リュック・ゴダールやジャック・ドゥミなどヌーヴェルヴァーグの監督の作品で助監督を経験し、フランソワ・トリュフォー監督の作品ではプロデューサーを務めたこともある人物だ。その縁もあってトリュフォー監督が52歳で亡くなった後、遺稿シナリオを脚色し『小さな泥棒(1988)』として発表したのはミレール監督である。
 
Garde_a_vue_TV5MONDEApac.jpg

本作『検察官』はミレール監督の知名度を一気に上げた『なまいきシャルロット(1985)』以前の作品なので日本では劇場公開されていない。以前DVDは発売されたものの、タイトルが『レイプ殺人事件』という手に取るのもためらってしまうようなもので、現在は廃盤となっている。

そういったこともあり、どちらかというと本作のアメリカでのリメイク作『アンダー・サスピション(2000)』の方が有名だ。こちらはプエルトリコを舞台にしており、地元の名士で幼女殺人事件の容疑者である人物をジーン・ハックマン、事件解決を目指すベテラン刑事をモーガン・フリーマンという配役で取り調べでの演技合戦が見物であった。

Garde_a_vue_TV5MONDEApac_1.jpg

Garde_a_vue_TV5MONDEApac_2.jpg
 
『検察官』は回想シーンを除いてほとんどの場面は警察署の取調室で、時間も大晦日の晩から翌朝までと、限定された空間や時間の中で展開される。

ガリアン刑事(リノ・ヴァンチュラ)は連続して起こった少女の暴行殺人事件の容疑者として公証人のマルティノ(ミシェル・セロー)の取り調べを始める。マルティノは2件目の事件の第一発見者であったが、市民の告発手紙やガリアンの刑事の感でマルティノが犯人であると確信しているようだ。決定的な証拠もアリバイも無いマルティノは刑事の質問をのらりくらりとかわすばかり。年末のパーティーの予定だったのかタキシードを着ておりこの人物の優雅な人柄が想像できる。そんな彼だが家族に電話するように言われると、頑なに拒否する。彼は妻を巻き込みたくないと言うのだが、実は妻シャンタル(ロミー・シュナイダー)とは家庭内別居状態で、訳あり夫婦のようだ。

Garde_a_vue_TV5MONDEApac_3.jpg

結局シャンタルは警察署までやってくるのだがマルティノが面会を拒否したため、ガリアン刑事が一人でシャンタルと面会する。このときに夫との関係やマルティノの偏執性のエピソードが妻の口から語られる。一方ガリアンが不在の間に気の短い刑事がマルティノに暴行を加えてしまうなど、ちょっとした人の出し入れでサスペンスを生み出しており、本作では緊張感が絶えることがない。
 
妻の証言や証拠品から事件は一件落着、となりそうとなりそうなところ最後の最後で実は…というのはリメイク版も同じだが、冒頭で男が車の盗難の被害を警察に訴えており、それがオチに使われるという本作の構成は素晴らしい。冒頭からモニカ・ベルッチが惜しげもなく裸体を披露するリメイク版と比べ、ヒロインであるロミー・シュナイダーの登場はラストの30分という禁欲ぶりも、本作の緊張感の醸成に一役買っている。
1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

おすすめ

 

おすすめ

 

おすすめ