映画  L'ÉCHANGE DES PRINCESSES 『王妃の交換』
30/09/201917:48 Yusuke Kenmotsu
政略結婚に翻弄される女たち
 
2017年のマルク・デュガン監督作品。セネガル出身の彼はエールフランス空港で要職を務めたのちに作家に転身した。1998年に書かれた『将校たちの部屋』は多数の文学賞を受賞しベストセラーとなった。日本で翻訳されているものでは『FBI-フーバー長官の呪い(2007)』や『沈黙するロシア-原子力潜水艦事故の真相(2008)』などがある。多くの歴史小説を執筆しているので作家のイメージが強いが、2010年に自分の小説を映画化した『Un execution ordinaire』で映画監督としてデビューした。本作『王妃の交換』は彼にとって4本目の監督作品である。

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これまで自作小説を監督することが多かった彼だが本作はシャンタル・トマの同名小説を彼が脚色し映画化している。シャンタル・トマの小説といえば『王妃に別れをつげて』が映画化されて日本でも『マリー・アントワネットに別れをつげて(2012)』として公開されているが、フランス革命という歴史の転換点での、時代に翻弄されるヒロインたちへの焦点の当て方など女性ならではであった。本作『王妃の結婚』も本来ハードボイルドな男社会を描くマルク・デュガンの世界からはかけ離れた女性の繊細な視点がシャンタル・トマの原作によって持ち込まれている。
 
曾祖父であるルイ14世の死によりわずか5歳で即位することになるルイ15世。政務などは甥にあたるオルレアン公フィリップ2世(オリヴィエ・グルメ)が仕切っていた。1721年、西仏戦争後の疲弊もありスペインと和平を結ぶためにオルレアン公は自分の娘モンパンシエ嬢をスペイン国王の後継者と婚約させ、ルイ15世とスペイン王女マリアナ・ビクトリアを婚約させる。

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スペインから一人でやってきたマリアナはまだ4歳でぬいぐるみと一緒に寝るような幼女だ。権力者の都合で連れてこられても愛嬌たっぷりで楽しく過ごしており、養育係や側近たちも王妃にふさわしいと大いにかわいがっている。

一方モンパンシエ嬢は親の決めた結婚に逆らうことはできず、スペインに行くものの反抗的で夫であるスペイン皇太子が体に触れようとするのも拒むほどだ。王位に就いた夫とようやく分かり合い始めたところで彼は天然痘で死んでしまう。

ルイ15世が2日ほど病に伏したことをきっかけに側近たちはいち早く跡継ぎを作る必要があると考えるようになる。そこで問題になるのはマリアナの年齢で、彼女では幼すぎて子供を産むことは望めず婚約解消を決定する。

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本作で描かれる王妃の交換は2組ともうまくいかず、結局自分の国へ帰ることになる。権力者たちの都合で翻弄され、それでも奮闘する女性たちのエピソードはなかなか表に出てこないような話だが、大変興味深い。ヴェルサイユ宮殿での撮影や華麗な衣装などみどころもいっぱいだ。この題材なら戦国時代を舞台とした日本版も制作可能だろう。
1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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