映画  PAS DE PROBLÈME ! 『ノープロブレム!』
18/11/201917:17 Yusuke Kenmotsu
死体を隠し、死体を追う
 
1975年のジョルジュ・ロートネル監督作品。40本以上ある彼の監督作品のうち日本で劇場公開されたのは半分ほどで、その多くはアラン・ドロンやジャン=ポール・ベルモンドを主役に据えたアクション映画であった。本作『ノープロブレム!』はミウ=ミウ主演のコメディで、日本では劇場未公開。ロートネル監督のヒロインが多かった1世代上のミレーユ・ダルクがアラン・ドロンなどの男性スターの横で輝いていたのに対し、新しい世代のミウ=ミウは彼女一人で主演を張るケースが多かった。ベルトラン・ブリエ監督の『バルスーズ(1974)』でのヒロインとして一躍脚光を浴びた彼女だが、主演作品はなかなか日本では公開されず、VHSで紹介されるケースが多かった。
 
本作は冒頭、かなり激しいカーチェイスのシーンから始まる。街で銃撃を受け車に乗り込み逃げる男、それを追う2人の男たち。タイヤをキュルキュルと軋ませ、他の車にぶつかりながら右に左にと通りを爆走する2台の車の走りは迫力満点だ。状況説明のないまま続くこの追跡劇は、なにか別のアクション映画のクライマックスを観ている心地になる。ロートネル監督の別の作品で後に転用されたとまことしやかに囁かれるほど異質なシーンである。

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追われる男は車を乗り捨て、這うようにあるアパートに逃げ込む。この血だらけの男がなんとか入り込むことができたのが、この映画のヒロインであるアニータ(ミウ=ミウ)の部屋であった。勝手に入って来たはた迷惑な来客はそのまま事切れてしまう。慌てふためくアニータはドアの外に出てしまいオートロックに締め出される。知人にも連絡が取れず仕方なくバーで途方に暮れていると医学生のジャン=ピエール(ベルナール・メネズ)という男がナンパをしてくる。そんな男にかまっている場合ではないアニータであったが、なんでも力になるという彼を利用し、鍵を開けてもらうことにする。もちろん素人にそんなことができるはずもなく、結局錠前屋を呼んで開けてもらう。ドアが開いてもすぐには帰ろうとしない下心いっぱいのジャン=ピエールは部屋に入り、死体を見つけてしまう。アニータから事情を聞いた彼は警察を呼ぼうとするが、アニータが頑なに拒否する。彼女は最近刑務所から出てきたばかりだったので厄介ごとを嫌っているのだろう。彼らはジャン=ピエールの車で死体を安全なところに運ぶことにする。一旦ジャン=ピエールの家に立ち寄ると、外出中と思っていた父親エドモン(ジャン・ルフェーブル)が在宅中であった。ジャン=ピエールのものと思っていた車は実はエドモンのもので、エドモンはすぐに車を使うという。ジャン=ピエールは止めることができず、エドモンは死体を乗せた車で外出してしまう。放っておくことはできないので車を持っているアニータの友人のダニエルも巻き込み、3人で死体を乗せたエドモンの車を追いかけるのであった。

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本来なにも関係のないはずの死体を必死に隠そうとするアニータや下心でアニータに近づいたジャン=ピエールが死体に翻弄される姿が面白い。本作は追跡劇的ロードムービーの趣きもあるが、なにかを隠ぺいしようとすると別の事が明るみになるという戒めにもなっている。死体を隠すかわりにアニータは男性関係や罪歴が、ジャン=ピエールは家族の恥(父の浮気)が露呈してしまうのだ。

浮気親父エドモンは浮気を隠ぺいしようと妻に電話で、近くにいるのはホテルの掃除婦だと嘘をつき、掃除のおばさん扱いされた愛人は怒り狂って死体の乗った車で直接妻のもとに行き、エドモンとの関係を暴露する。終盤、アニータたちも集結し喧々囂々の大騒動のなか、もはや蚊帳(車)の外で冬の風物詩スノーマンとなっている死体には哀愁すら漂っている。


 
1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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