映画  MALABAR PRINCESS 『アルパスの少年 ぼくの願い事』
24/12/201913:40 Yusuke Kenmotsu
雪に覆われた真実
 
2004年のジル・ルグラン監督作品。彼は本来プロデューサーで、フィリップ・リオレ監督『パリ空港の人々(1993)』やジャン=ピエール・ジュネ監督『ミックマック(2009)』『天才スピヴェット(2013)』など日本でもお馴染みの作品を手掛けている。監督としては8本撮っており、『もしも息子が選べたら…(2011)』のように実際のシャトーを使ってワイン農家の後継ぎ問題を素晴らしいロケーションで撮影した作品などあるものの、日本では1本も劇場公開されていない。

本作『アルプスの少年 ぼくの願い事』はタイトルから分かるようにアルプスを舞台としている。これだけではなく2008年には『娘と狼』という第一次大戦直前のアルプスを舞台にした作品を撮っていたり、2013年と2015年にこちらもアルプスが舞台の『ベル&セバスチャン』とその続編『ベル&セバスチャン 新たな旅立ち』をプロデュースしていたりとアルプスへのこだわりの強さがうかがえる。

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本作の主人公はトム(ジュール=アンジェロ・ビガネ)という8歳の少年だ。彼は幼い時に母がアルプスで行方不明になったため、父ピエール(クロヴィス・コルニアック)と2人暮らしをしていたが、父の仕事の都合で母方の祖父ガスパール(ジャック・ヴィルレ)にあずけられることになった。新しい学校に行っても、母を失ったためか失読症であったトムはなかなか周囲と打ち解けることができない。

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大人たちはアルプスで失踪ということが死を意味していると分かっているが、8歳のトムにとってはそうではない。トムは学校を途中で抜け出して母を探しにモンブランの方へ向かうなどヴァランティーヌ先生(ミシェル・ラロック)やガスパールを困らせてばかりだ。学校に慣れブノワ(ダミアン・ジュイロ)という友人を得てからは問題児っぷりが加速する。ガラクタを収集している老人ロバート(クロード・ブラッスール)から1950年代にアルプスに墜落したインドの旅客機マラバル・プリンセス号(本作の原題)の話を聞くと子供だけで意気揚々と山に入っていく。また移動のために祖父ガスパールが仕事で運転している路面電車を勝手に動かしてしまうなど危険なほどの無邪気さで冒険を楽しんでいる。

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アルプスの雪で覆い隠されたマラバル・プリンス号の残骸が長い年月の後、少しずつ発見されるように、トムは覆い隠された母の失踪の真相と家族の秘密を見つけることになる。

少年にとって母親という大きな存在を失った物語だがあまり暗くならないのは、新しく多くの人たちと出会う映画だからだろう。トムとブノワの友情は冒険映画のようでわくわくさえする。そして少年たちを暖かく見守るベテラン役者、ジャック・ヴィルレとクロード・ブラッスールの存在もこの映画に安心感をもたらしている。

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1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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