映画  LES COUSINS 『いとこ同志』
17/01/202016:51 Yusuke Kenmotsu
遊び人と不運な男
 

1959年のクロード・シャブロル監督作品。本作はシャブロル監督にとって『美しきセルジュ』に次ぐ長編第2作目である。『いとこ同志』はこの年のベルリン国際映画祭で最高賞である金熊賞を受賞した。同年フランソワ・トリュフォー監督の『大人は判ってくれない』がカンヌ国際映画祭で監督賞を獲得したこともあり、このあたりから本格的にヌーヴェルヴァーグの到来を世間が認識するようになる。

『いとこ同志』では前作『美しきセルジュ』に出演していたジャン=クロード・ブリアリとジェラール・ブランが引き続き、絶妙なコンビで男の友情を演じている。舞台は前作がクルーズ県というシャブロル監督の出身地であったのに対して、本作ではパリとなっている。

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物語は純朴な青年シャルル(ジェラール・ブラン)が田舎からパリにやって来るところから始まる。彼は法学の試験のためにいとこのポール(ジャン=クロード・ブリアリ)のアパルトマンで放埓ないとこと同居することになる。リッチでやりたい放題の生活を謳歌しているポールの周りには女性の姿が常にあり、シャルルが訪ねた日も、ポールに捨てられた愛人ジュヌヴィエーヴ(ジュヌヴィエーヴ・クリュニ)が妊娠したと言ってやって来る。生みたがっている彼女に対しポールは堕胎費用を渡し帰らせてしまう。それでもパーティーと恋愛ゲームの生活をやめる気はさらさらないようだ。ポールの風貌はいつものジャン=クロード・ブリアリと違い、もみあげとつながるような口髭をたくわえている。これはヌーヴェルヴァーグの監督たちが批評家時代から愛していたイングマール・ベルイマン監督の『夏の夜は三たび微笑む(1955)』でのグンナール・ビョルンストランドからの拝借だろう。ヌーヴェルヴァーグの作品の特徴の一つとして、敬愛する監督たちへのオマージュや作品の引用がある。本作ではシャルルが足繁く通う書店で、彼が棚から本を手に取りまた戻すシーンがあるが、その本はサスペンス・スリラーの神様アルフレッド・ヒッチコック監督についての本だ。しかもその本は批評家時代の1957年にシャブロル監督が、のちにヌーヴェルヴァーグを代表する恋愛映画の巨匠となるエリック・ロメールと共同で書かれたものである。つまり自著を映画内の書店に紛れ込ませながらヒッチコックへの目配せをしているのだ。
 
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シャルルはポールによる遊びの誘惑にも惑わされず、勉強に集中し、年配の書店員と親子のように親交を深め、母への手紙も欠かさない真面目な青年だ。しかし彼も恋はする。パーティーでフロランス(ジュリエット・メニエル)に一目惚れするのだ。意気投合しデートの約束までこぎつけたはずが、時間と場所の勘違いにより、フロランスは2時間早くアパルトマンに来てしまう。そこにいるのは遊び人ポールで、フロランスは催眠にかかるかのように突然ポールの方になびいてしまう。帰宅したシャルルはポールから、フロランスと同棲することにしたと告げられる。絶望したシャルルをさらに追い込むのは試験結果だ。遊んでばかりのポールはカンニングで合格し、真面目なシャルルは落第してしまう。
 
絶望の淵に立たされたシャルルは、いつも悪ふざけでポールが脅してくる銃を手に取り、寝ているポールに銃口を向けるのだが、不運の男シャルルにとってそれが最大の悲劇を生み出すことは言うまでもない。

瑞々しく斬新な切り口で描かれる青春の光と影、ヌーヴェルヴァーグの代表作の一つである本作は今観ても新鮮だ。
1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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