映画  LES GRANDS DUCS 『パトリス・ルコントの大喝采』
07/01/202016:57 Yusuke Kenmotsu
大根役者3人組
 

1996年のパトリス・ルコント監督作品。彼は漫画家出身というのが一つの特徴だろう。雑誌に連載したり、自作の漫画の長編映画を自ら演出したりしていた。実写映画を撮り始めてからも『スーサイド・ショップ(2012)』というアニメーション作品を監督している。そしてルコント監督といえばなんといっても『仕立て屋の恋(1988)』と『髪結いの亭主(1990)』だ。それまでコメディ作品をずっと撮っていた彼が『仕立て屋の恋』で初めてシリアスなドラマに挑戦し、孤独な男の哀しき恋を見事に描ききって世界的に大ヒットをおさめた。続く『仕立て屋の恋』もルイ・デリュック賞に輝くなどフランスを代表する監督になったのはこのあたりの作品からだ。

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本作『パトリス・ルコントの大喝采』は舞台役者たちの物語だ。3人の初老の役者をいずれもルコント作品経験者が演じていて息ぴったりである。女性をすぐ誘惑するエディをジャン・ロシュフォールが演じていて、ルコント作品を通して幾度も見られるお約束の、目で女性を落とすシーンが本作でもしっかり与えられている。過去の舞台の失敗が忘れられず舞台恐怖症に陥るヴィクトールをフィリップ・ノワレが、シャネルのスーツを着込んだ変わり者コックスをジャン=ピエール・マリエールが演じており、3人のキャラクターがそれぞれ個性的で、彼らを観ているだけで十分楽しめる作品となっている。
 
舞台俳優のエディは端役ばかりなので衣装のまま劇場を飛び出し、タクシーで着替えてまた別の劇場へと大忙しだ。エディが所属プロダクションの事務所に給料を受け取りに行くと、昔の役者仲間ヴィクトールと再会する。エディたちは興行師シャピロン(ミシェル・ブラン)が主催する喜劇『スクビドゥ』の出演者を探しているという話を聞きつける。エディとヴィクトールがシャピロンの事務所に向かうと、実はシャピロンは破産寸前で、そこには差し押さえの執行官の姿も見える。役が欲しいエディとヴィクトールはすでに決まっている役者の半額で出演させてくれと交渉し、金銭的な問題を抱えるシャピロンはもう一人連れてくれば雇うと答える。そこでエディとヴィクトールはコックスの家へ向かう。なかなか巡業に出ることを承諾しないコックスを半ば強引に連れ出し巡業のバスに乗せる。

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地方での興行の際、興行師シャピロンは貫禄たっぷりの主演女優カルラ(カトリーヌ・ジャコブ)を呼び出す。いよいよ資金繰りが怪しくなったシャピロンはカルラに舞台上で倒れるように頼む。保険金で当座の資金をなんとかしようという考えのようだ。しかしカルラは女優のプライドからその要求を拒否する。

満員のお客が詰めかけた初日の幕が開くと、エディが舞台上で必要以上にカルラに接近したり、ヴィクトールが舞台に怖気付いて物置に隠れたり、コックスが台詞を忘れたりとドタバタを繰り返す。そしてシャピロンはなんとかカルラに怪我をさせようと舞台のせりを落として落下させる。カルラはそれでも自力で舞台に這い上がり芝居を続ける。観客はすべて演出だと思い大喝采を送る。
 
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この調子で連日連夜の大喝采を浴び、3人組の息もぴったりだ。しかし次の巡業先でもカルラを追いかけるシャピロンの姿があった。しかも今回は客席から銃を構えている。半狂乱のシャピロンが銃をブッ放してもすべてお芝居と思っている観客たちは大興奮。3人組はなんとかシャピロンを妨害しようと大奮闘。劇中劇も映画自体も怒涛の勢いで大団円を迎える。

映画人であるパトリス・ルコントが大衆演劇への愛を捧げた素敵な作品である。



 
1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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