映画  LE BONNET DE MODIBO 『モディボの帽子』
07/04/202020:19 Yusuke Kenmotsu
モディボの花嫁探し

2017年のブバカール・ディアロ監督作品。ブルキナファソで獣医の息子として生まれた彼は、ジャーナリストの仕事を始める。風刺的な週刊誌を創刊したり小説を書いたりと仕事の幅を広げ、2003年には映画映画制作にも乗り出す。

ブルキナファソの映画といえば『ヤーバ(1989)』や『掟(1990)』のイドリッサ・ウエドラオゴ監督が有名だが、本作『モディボの帽子』のディアロ監督は次の世代の監督だ。それまでのブルキナファソの映画はフィルムでの撮影ということでフィルムやカメラ、照明などの機材に膨大な費用が掛かり資金集めに苦労していた。ベテラン監督でも何年も資金を集めてやっと1本の作品に取りかかるということで産業として成立させるのが難しく、映画館だった場所がショッピングセンターになったり宗教施設になったりしていた。そういった時期にディアロ監督は安価なデジタルカメラで映画を撮り始める。低予算でスピーディーに制作する彼は短編やドキュメンタリーを合わせてすでに20本以上の作品を手掛けている。アフリカ最大の映画祭FESPACOは当初、フィルム撮影の映画こそ映画であるとディアロ監督の作品の出品を拒んでいたものの、地道な活動が実を結び、今では認められるどころか主流となっている。そういう意味では彼はブルキナファソ、ひいてはアフリカ映画界のデジタル革命の推進者といえるだろう。

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本作の主人公は仕事を早期退職した男性モディボ(イルドゥヴェール)だ。退職後はエチオピアのアディスアベバに移り住み新しい仕事を始める予定だった。車を運転中にラジオで彼の故郷の村長の訃報を聞く。それに驚いたモディボは急ブレーキを掛けてしまい、後ろを走っていたバイクと接触事故を起こしてしまう。バイクに乗っていたナディア(ジャミラ・バリー・ワルダ)には弁償金を渡すことを約束して別れる。後日、息子ジャン=フランソワ(アナトル・ゼブル・スグリノマ)にお金を届けさせると、それがきっかけでナディアとジャン=フランソワに恋心が芽生えるというラブコメ的挿話が微笑ましい。
モディボは村長の葬儀などのために久しぶりに故郷に帰ると昔なじみの知人たちに歓迎されるが、それだけでなく、次の村長候補たちの争いや村の窮状を聞かされる。そして人々からの信頼が厚く真面目なモディボは村長になるよう諭される。アディスアベバへ行く計画がモディボは一旦断る。しかし次の村長候補の横柄な態度を見かねて彼は村長に立候補するのだった。「主義に反する」が口癖の誠実なモディボが、外界から閉ざされまともな民主主義が機能していない村社会で村長になり、その証としての帽子を頭に載せることができるのかというのが本作の見どころだ。

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評議会で首長を決めたり、村長には妻がいないと立候補できなかったりといったその地域独特の因習を風刺的に描きながら、やもめのモディボの花嫁探しというラブコメテイストで味付けすることによりエンターテインメントにもなっており、ブルキナファソに関心を持つきっかけにもなるような作品である。
1982年生まれ。京都市在住。 古今東西の映画や国内外の映画祭を愛す。 フランス映画に惹かれたきっかけは、印象派絵画の巨匠オーギュスト・ルノワール の次男坊という興味で観始めたジャン・ルノワール監督作品との出合いから。 人生の悲喜交々を、自然や天候と戯れるような大らかさや女優たちへの少しばかり 淫らな視線、画面の構図、色彩感覚といった父親譲りの才能で描き出された彼の 作品群で映画の歓びを知る。 フランス映画以外ではアメリカのフィルム・ノワールや西部劇が特に好み。 映画検定一級取得。

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